頭と体と心のズレ
最近、面白い体験をしました。
私は長年看護師をしていました。看護師をしている時は患者さんに食事指導をすることがよくありました。
なので栄養学についての知識は一般の方より豊富ですし、看護師を辞めてからも関心があり、日常的にその観点から食事を作ったり摂ったりしていました。
もちろんパーフェクトな食生活だったわけではありませんが、少なくとも今はどの程度乱れているのかは把握しながらいることができていたと思います。
ところが、ある日ダイエットの専門家の方からダイエットの食生活に関するお話を伺う機会がありました。
その時その方が私にどのようなことに気を付けているか尋ねられ、私は「なるべく食べ過ぎないようにしているぐらいです。」とお話しました。
するとその方は「それだけは止めてください。」と二度重ねて言われました。
私は『ん?何か勘違いされたか、言い間違えたのだろう。』と心の中で思い、その場の話は流しました。
でも、2~3日すると変なことが起こり始めました。
私の中で“食べ過ぎてはいけない”という言葉と“『食べ過ぎない』を止めないといけない”という言葉がリフレインされ、暇になると頭から離れません。
なんだかんだともやもやと不快な気分です。
そうですよね、真逆の言葉が頭にほぼ同時に湧いてくるわけで、しかも片方は長年当たり前と思って意識してきた言葉なわけです。
そしてもう片方はそれを完全に否定する言葉なわけです。決着など付くはずもありません。
そうこうしているうちについに私の第三の言葉が口を挟むようになりました。
『何を意味のない論争をしているの。食べ過ぎるも過ぎないもない、私がしたいように決める!』
その場ではあまり気に留めていなかったつもりでしたが、私の中では三つの言葉によるまさしく論争に発展していっていたんです。(驚)
ありえないと思われますよね。私も全く同じで『ありえない!いったい何が起きてるの?』と気味悪く思っていました。
自分で自分をコントロールできない感覚、どうしようもない感覚なのですから。
それで、『これはやばい』と思い、そのダイエットの専門家の方にまたお会いしに行ってきました。
そして何気なく『食べ過ぎないを止めないといけない』という言葉を訂正してもらうべく誘導して、正しい言葉を確認して復唱していきました。
その方にすればなぜ私がそのようなことをするのか意味不明だったろうと思います。ちょっと不思議そうにもしていらっしゃいましたが、私がダイエットの食事に関心があって聞いているのかな?と思われたのだと思います。いろいろとお話してくださいました。
でも、その日から私の中の論争はぴったりと無くなりました。そして、心の平安が訪れました。(笑)
このお話はどういうことだったのかお判りでしょうか?
実は私はその方のちょっとした言い間違いに対して、私の中の常識とは大きくかけ離れていたので『あれ?この方は専門家のはずなのに・・』と思ってしまい、小さなパニック状態になってしまったのだと思います。
そのちょっとした油断(脳の混乱は油断を引き起こします)でその方の“間違った言葉”が心に焼き付いてしまったのですね。
それで体はこれまでの私の常識である“食べ過ぎてはいけない”を主張し、心は“食べ過ぎてはいけない、を止めなくてはいけない”を主張し(そもそも日本語的には可笑しいんですけれど、そこは言葉が持つ特有の力でもあるのでしょうね)、そのやり取りに対し私の頭が“私が決める、私に従いなさい”をやっていたということのようです。
結果的には私の中の論争の翌日、口の中に炎症が起き、二日ほど痛くて食べれないという形で決着がついたという、ま、これまでの長年の私の中の常識が勝ったというか、身体の主張が勝ったというか、これはこれで別の意味でちょっとがっかりな結果だったわけですが・・・。(苦笑)
もう少し解説をいたしますと、一つは(今回は私のダイエットの食習慣に関するものでしたが)価値観・信じ込みが“頭”と“心”と“身体”でズレると三つ巴の論争が起き、そうなると収拾がつかなくなる、ということ。
もう一つはこの価値観・信じ込みのズレは外からの刺激(言葉)で起きてしまうということ。
そして三つ目には古い価値観や信じ込みを変えたいと思ったら、知識だけでは到底無理で、“頭”と“心”と“身体”の全てに適切な働きかけが必要ということです。
今回のお話は極端だと感じられることもあるかもしれません。
ですが、実際にこうしたことは良く起きているのだと思うんです。
“決められない”と感じる時、頭の中で様々な考えがよぎると思うのですが、ほとんどの場合真逆の思考が同時に出てくることで結論を出せなくなっていませんか?よく観察してみてください。
そして“頭”と“心”と“身体”のどこが主導権を握るでしょうか?
もし“頭”でなければ、あなたは全く動けなくなっているでしょう。
そしてそれはあなたの癖になってしまっていませんか?
でももしその仕組みに気が付くことができたなら、あなたはそこから抜け出すことができるかもしれません。